副業で始めた仕事が軌道に乗り、収入が増えてきたときに皆さんが考えるのが「法人化」です。法人化すると節税になるとよく聞きますが、本当なのでしょうか?また法人化するのは色々と面倒でお金もかかるので、大まかにどれくらい経費がかかるのかも紹介します。メリット、デメリットをふまえて、自分はどうするべきか検討しましょう。
法人化ってどういうこと?メリット、デメリット
個人事業主と法人の大きな違いは、法人化すると働いている人があなた一人だったとしても、団体として認められるという点です。設立者は社長となり、役員報酬として収入を得ることになります。
メリット
法人化する主なメリットは以下の通りです。
社会的信用
他と頻繁に取引する副業の場合、法人化しているだけで信用度が違います。やはり個人事業主だと一人だけで運営しているという印象ですが、法人化していれば、たとえ社員があなた一人でも、税理士など社会的信用のある人が関わっていることが分かり、「きちんと運営している」と思ってもらえるのです。
節税
日本の税制は「多く稼いだ人が多く納める」というシステムです。そのため収入がアップすると税率もアップし、個人事業主は最大55%もの税金を課せられてしまいます。
しかし、法人化すると概ね最大40%程度です。その差の15%は、例えば500万円の年収では75万円程度、2ヵ月分の月収に値してしまいます。
デメリット
法人化にはデメリットもあります。
法人税が課税
法人税はいくつかの種類に分けられますが、ここでは法人住民税について紹介します。個人事業主は前年が赤字であれば、税金は発生しません。しかし法人住民税は所得にかかわらず毎年7万円程度かかってきます。
役員報酬は簡単に金額を変えられない
個人事業主であれば、売り上げから経費を引いたものがそのまま収入になりました。頑張って売り上げを伸ばせば、自分にも多く戻ってきます。しかし役員報酬は一度設定するとなかなか変更ができません。これがいくつかの問題を起こすのです。
前年の売り上げは良かったが今年はさっぱりという場合、現状売り上げが少ないけれど自分は高額の役員報酬を受け取ることになります。しかも役員報酬には税金がかかってきますし、会社にも法人税が課せられ収入と経費のバランスが捻れた状況になります。
また前年よりも大きく売り上げがアップすることもあります。この場合、事業所得から役員報酬を引いた額が会社の利益として残り、この残金を元に次年の法人税が計算されるので、残金はなるべく少なくしたいのが本音です。このためにボーナスを支給するのですが、役員に対するボーナスの手続きは面倒で、支給する前に税務署への届け出などが必要です。
経費がたくさんかかる
主な経費をざっと紹介します。
会社設立時の手続きに15万円
自分でもできないことではないのですが、専門家に頼むのが一般的です。理由としては専門家の方が早く正確に手続きしてくれるからです。自分で手続きすると初めてのことで時間がかかります。間違いがあればそれを修正しなければいけません。その時間を事業に当てたらいくら売り上げることができますか?稼ぎが大きい人は、手続きの時間を時給換算すると結果的に専門家に頼んだ方が安くつくことが多いのです。
確定申告が複雑なので税理士を雇うので20万円弱
個人事業主としての確定申告でも、会計ソフトを使いながら分からない、どうしたらいいんだろう、と悩んで書類を作成していたことでしょう。法人化するとより一層書類が難しくなり、自分でやると莫大な時間がかかります。
法人なら社員が社長一人でも社会保険に加入義務
個人事業主なら社員が5人以下の場合は社会保険の加入は任意でした。しかし法人化すると社員が何人でも社会保険に加入しなくてはいけません。副業でやっている場合、たいてい本業で社会保険や厚生年金に加入しているはずなので、そちらを抜ける必要もあります。
法人化を考えるタイミングは?500万が目安
法人化を考えるタイミングは、売り上げが500万円を超えたときだと言われています。理由は上記の節税と経費のバランスです。しかしそれ以外にも気をつけないといけない事柄があります。
事業内容が経費がかかりにくいものは法人化した方がお得
個人事業主は最大65万円が経費として計上できます。しかし、事業内容によってはほとんど経費がかからないものもあり、控除されるものがない場合もあります。その時は法人化し、自分を社長に据えて役員報酬を受け取った上で、給与所得控除を受けた方が良い場合があるのです。
消費税の問題、最長4年消費税が免除
個人でも法人でも、事業を始めたら最長2年間消費税が免除されます。消費税の課税は「2年前の売り上げが1000万円を超える個人事業主と法人」という条件です。
まずは個人事業主で事業をスタートし、2年後法人化します。法人化後2年間売り上げが1000万円を超えなければ4年分の消費税が免除され、取引相手が支払ってくれた消費税は自分の収入とすることができるのです。
法人化が向く副業、向かない副業
どんな事業だと法人化した方が良いのでしょうか?
クラウドソーシングで稼いでいる人の法人化は?
クラウドソーシングで稼いでいる人はほとんど経費がかかりません。家賃や光熱費などを経費として計上しても、それほどの金額にはならないでしょう。専門的な仕事を請け負っており、高額収入を得ているのであれば法人化を考えても良いですが、案件によっては「法人は募集していない」ものもあるので、自分の事業内容ではどうなっているのか確認しなくてはいけません。
アフィリエイトの法人化は?
アフィリエイトも経費がかかりにくい事業です。また長期できちんとサイトを運用すれば安定した収入があるので法人化に向きます。ただし、まだ成長中の場合、一年間でどれくらい伸びるのか、それを見越して役員報酬はいくらにしておくべきなのか、を考えなくてはいけません。
投資は?
投資は収入が安定的ではないので稼ぎが大きくなければ、法人化のデメリットの影響が強く出る可能性があります。また法人口座やローンの問題もあり絶対にいくら以上でないと損になる、とは言い切れません。
まとめ
副業を法人化した方が良いのかどうかの判断は、それぞれなので一概に言うことはできません。まずは年間500万円程度になり、収入が大きく落ち込むことがないようなら税理士などの専門家に相談してみると良いでしょう。法人化すると関わってくる法律も増えてきます。自分だけの力では難しいので、きちんと専門家の力を借りましょう。