通勤中や勤務先で、怪我や死亡にいたるトラブルがあった際に適用される「労災保険」。本業を持っている方は、既に適用対象者かと思いますが、副業をしている場合はどちらの労災保険が優先されるのか、ご存知の方は少ないようです。そこで今回は、副業と労災保険の関係をリサーチしてみました。
今更だけどおさらい!「労災保険」って何?
労災保険とは、通勤途中や仕事中に怪我や病気、死亡に至るトラブルがあった時に、下りる保険のことです。当事者である就業者やその家族に一定額が支払われます。支払われる額については、後述します。
労災保険は会社から就業者への「義務」である
「自分は安全第一で仕事をしているから、労災保険には入らなくても大丈夫!」と思っている就業者もいるかもしれませんね。しかし、労災保険への加入は、「会社が就業者に適用しなければならない義務」なので、避けては通れません。これは、正社員もアルバイトも同様です。ブラック企業の存在が過剰にたたかれている今のご時世、労災保険を適応していない会社はほぼないと思いますが、万が一副業先が労災保険を適用していなかったら、間違いなくブラック企業です。直ちに身を引くことをオススメします。
計算方法、支払い先etc。副業する際の労災保険の留意点とは?
本業+副業の長時間労働では労災保険が下りない可能性がある
長時間労働による怪我や過労死は、労災保険の対象内です。ただしこれは、「一つの職場での長時間労働」に限られています。そのため、本業+副業による長時間労働は、就業者の自己責任となり、労災保険が下りない可能性があります。
労災保険の支払いは「直近3ヶ月分の給与」から算出される
労災保険の支払いは、原則、直近3ヶ月の給与平均の80%で計算されます。インターネット上に、無料で使える労災保険の計算シミュレーターがあるので、金額が気になる方は使ってみてはいかがでしょうか?
支給は2ヶ月おき
労災保険は、2月、4月、6月、8月、10月、12月に支払いされます。その中身は、「12月分と1月分が2月に支払われる」「2月分と3月分が4月に支払われる」といった感じです。支払われる期間は、労災を受ける権利が無くなった月までとなっています。
労災保険は「怪我をした勤務先」からしか支払われない
例えば、副業中に怪我をして、本業も休まなければならないケースがあったとしましょう。この場合の労災保険は、副業先からしか支払われません。もし、本業先で怪我をして副業を休まなければならなかった場合は、本業先から支払われることになります。
副業先の労災保険は補償額が少ない
副業で稼いでいる額が、本業の額を越えるいる人は少ないと思います。そのため、副業先の平均給料で計算される労災保険は、補償額が少ないのです。比較的軽度の怪我ならまだしも、障害が残る程の怪我に見舞われたら、本人だけではなく家族にも影響が出ます。そのため、危険を伴う職種は、副業には選ばない方が賢明でしょう。
移動中に起こった事故は「通勤先」の労災保険になる
移動中に起こった事故の労災保険は、「通勤中」or「帰宅中」という解釈です。そのため、「本業先から副業先に移動する時に起こった事故」は、副業先の労災保険になります。
フリーランスは労災保険が下りない
近年はクラウドソーシングが普及しているため、フリーランスとして在宅副業しているサラリーマンが増えました。この場合の副業は、労災保険に加入していないのが通常なので、副業中にトラブルがあっても労災保険は下りません。
フリーランス用の労災保険に加入しよう
フリーランスでも、加入できる労災保険があります。ただし、希望者が全員加入できるとは限りません。仕事内容やトラブルの可能性を考慮して加入の可否が降ります。万が一に備えておきたい人は、検討してみてはいかがでしょうか?
国が労災保険の見直しを検討中
前述したように、副業中に起こった労災保険は、副業先の給与平均で計算されます。昨今の日本は、副業を推奨する流れが強まっているわけですから、一般のサラリーマンが安心して副業できるためにも、収入が多い方の給与平均で計算したいところです。そこで厚生労働省は、新たな計算方法に乗り出しています。
今後の労災保険は「全ての給与平均」から算出か?
厚生労働省は、本業も副業もひっくるめた「全ての給与平均」から労災保険を算出できる計画に乗り出しています。これは、労働政策審議会で前向きに議論されているため、そう遠くない未来に新制度がスタートしそうです。現在の日本は、労災保険の積立額が8兆円と言われているので、就業者が得をする計算方法に変わっても、財政に大打撃はなさそうですね。
今後の課題は「負担」の算出方法
前述したように、計算方法が変わりつつある労災保険なのですが、まだまだ課題も残っています。それは、勤務先が抱える「負担」の算出方法です。今までは、副業先で事故が起こった場合は、本業先が労災保険を抱える必要はなかったわけですが、算出方法が変わると、本業先も負担を抱えることになります。本業先からしたら、「うちは関係ないんだから、とんでもないよ!」となるのは必至です。今後、このような課題を政府がどのようにクリアしていくのかに注目が集まっています。
まとめ
今回は、副業と労災保険の関係に焦点を当ててみたのですが、いかがでしたでしょうか?副業を求めている就業者は、お金しか見ていないことが多いので、労災保険は見向きもしていなかったことでしょう。しかし、副業がOKしている企業が増えつつある今、労災保険は無視できない問題です。これから副業を検討している人たちは、労災保険の有無にも気を配りながら就業先を探してください。既に副業をしている人は、副業先の労災保険を今一度確認してみてはいかがでしょうか?もしかしたら、とんでもないブラック企業で働いているかもしれませんよ。